今回のニュースでは、お笑い芸人が生成AIを利用して“裏アカ女子”を作成し、アダルトサイトへ誘導するビジネスを紹介したことに対し、批判が集まりました。この件について、単なる芸能人の不祥事として片付けるのではなく、社会的な視点から問題点を整理し、提起すべき課題を考察します。
元お笑いコンビ「赤もみじ」の阪田ベーカリー(29)が、7日までに自身のX(旧ツイッター)を更新。お笑いコンビ「春とヒコーキ」ぐんぴぃ(34)のYouTubeチャンネル「バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】」の動画で紹介した仕事について弁明した。
阪田は、5日に配信された動画「エチョナの裏側にいる人が真実を告げに来てくれた【元赤もみじ阪田】」で、生成AIで作り上げた“裏アカ女子”のX(旧ツイッター)を運用し、有料のアダルトサイトに誘導するビジネスを紹介。動画の概要欄には、その求人広告を掲載した。
このビジネスについて批判が集まり、動画はアップからほどなくして非公開に。ぐんぴぃは、自身のXで「性産業ならびに生成AI関連に関する理解が足りてないまま、昔の芸人仲間を応援する気持ちで内容を精査せずに撮影してしましました。想像力を欠いた軽率な行動だったと反省しています」などと謝罪した。
① 生成AIの悪用と倫理問題
生成AIは、クリエイティブな活動やビジネスの効率化に貢献する一方で、不正利用のリスクも大きくなっています。特に今回のように、架空の「裏アカ女子」を作成し、あたかも実在する人物のように装う行為は、次のような倫理的問題を孕んでいます。
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実在する人物の肖像権・プライバシー権の侵害の可能性
「実在する人物の画像を基に生成しているのでは?」という指摘があったことからも、既存の写真やデータを流用していた可能性が懸念されます。AIによるディープフェイク技術が進化する中、悪用の防止策が急務です。 -
ユーザーの誤認を狙った詐欺的手法
AIによって作成された架空の人物が「リアルな存在」と誤解されるような形で運用されていた場合、それは消費者を欺く行為であり、倫理的に問題があります。SNSを利用した詐欺的行為として、社会全体で監視と規制が必要です。
② アダルトサイトへの誘導と性的搾取のリスク
アダルト業界におけるSNSマーケティングは、法的にも倫理的にもグレーな部分が多く存在します。特に問題なのは以下の点です。
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未成年の関与の可能性
生成AIが作成した画像であっても、未成年に見えるキャラクターが性的な文脈で使用されると、法律的に問題が生じる可能性があります。また、未成年ユーザーが「裏アカ女子」に騙され、誤って有料サイトへアクセスするリスクも考えられます。 -
利用者の安全確保
SNSを通じたアダルトサイトの勧誘は、詐欺や悪質な契約の温床になりやすいです。多くの消費者が、誤って高額課金されたり、不当な情報収集の被害に遭う可能性があります。
③ お笑い芸人・インフルエンサーの影響力と社会的責任
この問題の発端は、お笑い芸人がビジネスモデルとして紹介したことにあります。彼らは単なる広告塔ではなく、多くのフォロワーを持つ影響力のある人物です。
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無自覚な情報発信の危険性
インフルエンサーや芸能人は、フォロワーに対して大きな影響を与えます。そのため、ビジネスモデルを安易に紹介すると、ファンが「これは合法で安全なビジネスなのだ」と誤解し、同様の手法を試みたり、利用してしまうリスクがあります。 -
コンプライアンスと倫理観の欠如
生成AIやアダルトサイトの利用自体は違法ではありませんが、その運用方法においてコンプライアンスや倫理観が求められます。特に公の場で情報を発信する立場の人々は、発言やビジネスに対する慎重な判断が求められます。
④ 今後の課題と提言
今回の件を受け、以下のような社会的な対策が必要ではないでしょうか。
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生成AIの使用に関するルール整備
- AIによる架空アカウントの作成に関する規制を強化する。
- SNSプラットフォーム側もAI生成アカウントの識別・削除の仕組みを強化する。
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アダルト関連ビジネスの透明化
- アダルトサイトへの誘導を目的とするSNS運用について、消費者保護の観点から規制を強化する。
- 運営企業の実態や運用方法の透明化を求める。
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インフルエンサーの発信内容の監視
- 影響力のある発信者に対し、コンプライアンス研修の義務化を検討する。
- 広告・宣伝に関するルールを明確化し、不適切なPRを防ぐ。
まとめ
今回の問題は、「AIの悪用」「アダルト業界のマーケティング手法」「インフルエンサーの責任」という3つの大きなテーマに関連しています。
技術の進化とともに、ビジネスの形も変化していますが、その影響を受けるのは私たち消費者です。このような事例をきっかけに、社会全体で適切なルール作りと倫理観の確立について議論を深めていく必要があります。
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